10/24/2018
International Outdoor Friendship Meeting
@ University Utah

参加者:
Jim Sibthorp (Professor, University Utah, US)
Karla Henderson (Professor Emeritus, University of North Carolina,US)
Deb Bialeschki (American Camping Association,US)
Taito Okamura (backcountry classroom, Inc., Japan)
Aya Hayashi (Professor, Biwako Seikei Sport College, Japan)
Terry Zheu (China)
Chris Jing-Wei (China)

AORE/WEAカンファレンスの始まる前日、ユタ大学に上記のメンバーが揃いました。同じ日にACAの調査研究委員会が行われていた偶然のおかげで、定年退職されたとはいえアメリカの野外研究分野を長年けん引されてきたKarlaとDeb、現在野外研究分野において第一線で活躍するJim、そして日・中から2名ずつ、非常に貴重な機会を持つことができました。

非常に限られた時間の中、有意義なミーティングの機会を持つことができました。日・米参加者は長い付き合いでしたが、中国からの二人は初対面だったので、始めに自己紹介とそれぞれの野外経験、最近野外の分野にかかわる興味やトピックなどを話し、少しお互いを知り合った後で、本題に入りました。時間短縮のため、あらかじめ考えておいた質問をくじ引き形式でひき、その内容を話し、質問をしあうという形での情報交換を行いました。

トップバッターは、テリー、中国にて野外プログラムを子どもたちに提供する会社を立ち上げ、精力的にビジネスを展開する非常にスマートでやり手の彼女のひいた質問は、「自国の野外教育についての心配事を3つ」。1つ目は、中国では野外教育への理解度が非常に低いということ。スポーツなどは時間やお金をかける価値が認知されているが、野外活動はただの遊び、しかもリスクもあるということで、なぜわざわざしなくてはいけないのか?という認識が多いらしく、彼女の悩みとなっているようです。これについては、ある程度その問題はどこの国にもあるけれど、例えばアメリカは自然の中で活動するということ自体の価値はある程度認識されているようである。フロンティアスピリットの影響、心身のバランスが崩れる人が多いことが社会問題になっていることから、野外で時間を過ごすことは、健康的であるという認識があり、基本的にはその価値がある程度認識されているのではないか。しかし、アメリカ内には多文化の背景があるため、いわゆる白人に限られているかもしれない。また、“レクリエーション”の価値自体が西洋社会では誰もが持っている権利であり、自己実現の有効な方法という認識も広まっており、野外レクリエーションは特に人にとって多くの効果のあるものととらえられている。中国やアジアの地域でも野外活動の有効性についての幅広い認識を高めるには、研究成果をエビデンスとして積み上げていくことが重要ではないかという展開となりました。2つ目の心配事は、十分な資質を身に着けたスタッフがいないということ。職業として確立されておらず、基準や資格などもなく、新たに研修を行う、あるいは、アメリカやイギリスからスタッフを雇くしかないということでした。この件については、長年ACAにかかわるDebが、ACAの基準などが参考になるのではないかとアドバイスをくださった。しかし、スタッフに必要な資質は、そのプログラムが何を目指しているか、またどのようにスタッフが子供たちにかかわってほしいかによるため、その内容はそれぞれのプログラムによって合わせていく必要があっるといわれました。さらに、スタッフのコストが高いため、野外教育の恩恵を受けられるのは裕福な子どもだけであることも問題だと指摘しました。そのため、野外教育をもっと推進し、普及させることで、より多くの子どもに機会を与えることになるだろうし、スタッフの質向上にもつながるだろうと多くのメンバーが同意していました。

次に質問をしたのは、中国のクリスでした。彼はアメリカへの進学を考えており、アメリカの野外について強い興味を持っているようでした。まずは、アメリカの保護者は野外教育をどのように思っているのか?中国の親は野外はリスクが描く、あまり子供に進めないそうです。アメリカは?という質問は、テリーの質問同様に、おそらくどこの国でもある程度親が野外を危険だからやらせたくないと思っているが、実際にやらせるかどうかは、野外体験の価値をどれだけ認識しているか?というところによるのではないかという話になりました。また、アメリカにおいて大学の野外教育の課程は増えているのか?減っているのか?という質問に対しては、アメリカは大学の組織改革などがより短期間で行われるため、確かにあちこちの大学で野外関連プログラムが、伝統あるところも含めて閉鎖されてきているが、同時に新たに始まっているプログラムも多くあり、一概には言えないということでした。また、最後の質問は、どうやって野外教育の成果を測定するのか、また保護者にその価値を伝えるのか?という質問であり、ACAのDebがACAが長年かけてプログラム成果を測定する尺度を開発し、多くのキャンプにて使われていることを話してくださいました。自分のプログラムにあった内容を選び、測定し、その結果を用いて保護者などに説明するのは、非常に説得力があると説明してくださいました。

次に答えてくれたのはDebでした。質問は、私たちが国際的に取り組むべきことは何か?という質問であり、一つ目は、文化・言語の違いから、同じ言葉が十分にその意味を伝えられないこともあり、コミュニケーションを向上させる必要があるということでした。例えば、キャンプという用語はアメリカでは野外教育の一形態としてある程度認識されていますが、政治的に不安定な国においては、難民キャンプがイメージされたり、矯正機関のようなイメージがもたれたり、異なったイメージをお互いがもったまま会話が発展してくわけがなく、共通減ととして話ができるよう十分に注意しなければならないと指摘されました。また、ある特定の文化においてのみ価値を置かれるものと、世界的に共通の価値があり、共通性をさぐるところから、世界的な価値を追求し、共通理解を得ることが大切といわれました。

次にJimがひいた質問は、最近力を注いでいる組織は?という質問であり、ACA, NOLS, Outward Boundを挙げられました。ACAについては、Jimは長年ACAの研究委員会の委員を務め、多くのキャンプ調査を行い、尺度開発や全国的な調査結果から現場へフィードバックを行うなどの関わりを続けておられます。また、NOLSについては、UUが長年パートナーシップを結んでおり、授業・研究両面での交流が活発にあるということでした。また、最近は香港のOutward Boundとの関わりがあるようで、現地でのセメスターコースにも足を運んだそうです。組織の特徴も、対象も、プログラムも違うところとかかわるのはむつかしいのでは?という質問もでましたが、逆にアカデミアだからこそ、多くの関わりをもつことができ、もちろん現場レベルで行うこと、参加者集めやスタッフトレーニングなどは全く異なるが、問題として抱えていることや、改善のために考えられうことなどは同じ概念が活用できることが多く、違った視点でものを見れたり、幅広く眺めて重要なものが見えてきたりするので、アカデミアならではの関わりに手ごたえを感じておられるようでした。

最後にKarlaの質問は、この分野において彼女は研究業績に関して肩を並べる人がいないほどの業績を残した方であり、ぜひ研究に関することを話しいただきたいというリクエストに応じて、“研究を発展させるために必要なこと3つ”という質問に答えてくださいました。一つ目は、野外体験の有効性に関してはこれまでも十分に証明されてきましたが、意義のある結果を生み出すプロセスをより深く理解する必要があるということです。どのように行うことが、より効果的なのか、その部分に関してはまだ十分理解されているとはいえない、ということでした。二つ目は、データ収集のための新たな方法論の確立が必要ということです。いろんな方向から、また多様な方法で現場をとらえることで、多様な問題に対処できるようになるとお話しされました。3つ目は、参加者個人個人の性格や特徴とプログラムを連携して理解することが必要ということです。それぞれを別々にではなく、プログラムへのかかわり方やプログラムの成果は個人特性と関係があるはずなので、そのつながりも併せて理解することが重要であると説明してくださいました。

日本人2名の質問をする時間がなくなってしまったのですが、多様な立場、国籍、経験のメンバーが集まり、情報交換ができたことは、それぞれにとって刺激になることであり、非常に有意義な時間を過ごすことができました。