WEAJバックカントリープラクティカルセッション報告

WEAJの“ユースセッション”が主催する、初のスキルセッション。ユースセッションとは、主としてWEAJの資格を持つ20代を中心とした、ネットワーク型のチームです。全国に広がる20代メンバーのネットワーキング、野外指導スキルの維持向上、野外指導者を目指す若手へのWEAメソッドの発信を目的としています。ユースセッションでは、年に5回のトークセッションと1回のスキルセッションを企画し、指導者のネットワーク構築と自身の野外スキルアップを目指し活動しています。

普段は山、川、岩を舞台に行われるWEAコースですが、雪の世界もWEAのクラスルームになります。今回のスキルセッションには、資格の有無に関わらず高校生から野外教育従事者までの5名が参加し、バックカントリースキーを通じて、雪のリスクマネジメントの必須スキルであるアバランチコントロール&レスキューを学びました。

日時:2024年12月29日-31日
場所:苗場スキー場、同旧白樺ゲレンデ及びかぐらスキー場
参加:若泉将貴(COE)、難波勇吉(COL)、佐藤颯(COL)、渡邊あや(OLTC)、佐藤素帆(OLE)
講師:岡村泰斗(CE)
内容

DAY1 アバランチトレーニングDAY2 バックカントリートリップDAY3 スキートレーニング
900  ガイダンス
1000 アバランチレスキュー基礎
ビーコン/ゾンデ/ショベル
1300 アバランチレスキュー
脊椎固定搬送(ソリ)
シミュレーション
1530 トリッププランニング
1700 ナイタースキー
800 みつまたロープウェイ乗車
930 ハイクアップ開始
1040 弱層テストワーク
1330 神楽峰中尾根付近着  
ドロップイン 
1555 和田小屋着・下山
1900 ふりかえり
900 志向別スキートレーニング
基礎スキー 不整地/コブトレーニング
1300 成果発表会
フリー・自主練習  
1530クロージング/解散


午前9時に苗場ベースに5名が集合し、全体ガイダンスが行われました。初日はアバランチレスキューのトレーニングがメインです。午前中は、ビーコンワーク・ゾンデワーク・ショベルワーク(掘り出し)の3つを「分習法(パート・メソッド)」を用いてトレーニングしました。各スキルを個別にじっくり学ぶことで、基本動作の精度を高めることができました。

午後からは、LODを取り入れ、より実践的なシミュレーショントレーニングを実施。ビーコンを使った埋没者の捜索から傷病者評価、脊椎固定搬送までの流れを一連のシナリオとして行いました。天候が急変し、降雪の中での実施となったため、よりリアルな環境での訓練となりました。アバランチレスキューから搬送までの流れは、WEAやWFRのスキルを活かした、まさにWEAらしい研修内容でした。

研修後は希望者のみでナイタースキーを行い、実践的な滑走技術のトレーニングを実施。その後、翌日のバックカントリートリップに向けた行動計画を立てました。この時点で、参加者同士の関係も打ち解け、自然なコミュニケーションが生まれていました。

日目はスキートリップの日。かぐらスキー場のトップからドロップポイントまで、約3時間のハイクアップを行いました。前日までの降雪から一転し、当日は快晴。森林限界を超えると周囲の山々を一望できる、最高のコンディションとなりました。

途中の1時間では、斜面にピットを掘り、弱層テストのレクチャーを受けました。積雪の安定性を評価する良い機会でしたが、結果は「超安定」。雪崩のリスクは低く、滑るには理想的な状態でしたが、弱層評価の実習としてはやや物足りない状況でした。

慣れないシール歩行に苦戦しつつも、ドロップポイントに到着。眼前に広がる会津の絶景に息をのむ瞬間となりました。限られた時間の中で、ついにバックカントリースキー本番へ。気温上昇の影響で新雪は重くなり、スキー操作の難易度が上がる中、各自が試行錯誤しながらなんとか無事にかぐらスキー場まで戻ることができました。

ベースキャンプに戻った後、遠征の振り返りやLODの評価を行い、充実した一日を締めくくりました。

最終日は、参加者の志向に応じたスキートレーニングを実施。基礎スキー班と不整地(コブ)班に分かれ、それぞれ3時間の練習に取り組みました。どちらの班も、前日のバックカントリーでの悔しさをバネにし、熱のこもったトレーニングとなりました。

最後に、成果発表として、メンバー同士で滑りを披露し合い、全てのプログラムを終了。研修を通じて得た学びや成長を互いに確認し合いながら、3日間の締めくくりとなりました。

若泉将貴(COE)

昨年度から発足したユースセッションでは、「スキル向上」を目的の一つに掲げており、今回、念願のスキルセッションを開催できたことを心から嬉しく思います。このセッションでは、バックカントリースキーをメインのアクティビティとし、ビーコンやプローブ、ショベルなどの使用方法、弱層テストを含むアバランチ対策、さらに掘り出しから搬送技術まで、一連の流れを幅広く学ぶ貴重な機会を得ることができました。また、バックカントリートリップを通じて、普段の雪のない山とは異なる環境(雪上アクティビティ)におけるリーダーシップの重要性とスキーの技術不足を痛感し、自分自身の経験やスキルをさらに深める必要性を強く感じました。

今回のスキルセッションを通じて、四季折々の自然や質の良い雪に恵まれた環境で活動する日本の野外指導者にとって、雪上アクティビティ、特にスキーは欠かせないスキルであることを改めて実感しました。今後も、若手野外指導者同士がつながりを深められる場、お互いにスキルを高め合える場として、ユースセッションやスキルセッションを継続していけるよう、引き続き努力してまいります。

難波勇吉(COL)

今回初となるWEAJユースセッションのスキルアップ研修に参加し、大変有意義な時間を過ごすことができました。フィールドが雪山ということで、自分にとっては得意な環境での研修となり、改めて雪山の持つ魅力と可能性を実感しました。雪山は、無雪期の登山に比べて、より多くの課題を内包しているフィールドです。雪面状況に応じた行動計画の調整、スキースキルに伴う身体的負荷、そしてチームの精神状態の管理など、多様な要素が絡み合います。これらを学習のツールとして利用できる雪山には、野外教育の新たな可能性を強く感じました。また、雪山特有の美しい風景は、厳しい状況下においてもチームのモチベーションを高め、仲間と共有することでさらにその価値が高まることを実感しました。今回の研修では、5名のメンバーとともにバックカントリーを経験しましたが、共に活動できたことに大きな喜びと感謝の気持ちを抱いています。仲間と協力しながら行動することで、個々のスキルアップはもちろんのこと、チームとしての成長も感じることができました。一方で、雪山での活動は雪崩や天候リスクの管理、スキー技術など、指導者として求められるハードスキルが非常に高いことを痛感しました。しかし、日本は豊富な雪山環境に恵まれており、このフィールドを活用しない手はないと強く思います。今後も、自らの技術をさらに磨き、雪山を活かせる指導者として成長し続けたいと考えています。最後に、今回の貴重な経験を共にしたメンバーと講師の岡村さんに心から感謝し、今後も切磋琢磨しながら実践に向けて努力を続けていきます。

佐藤颯 (COL)

WEAバックカントリースキーベーシックセッションに参加し、多くを学ぶことができました。私は大学で山岳部に所属しており、冬山にも取り組んでいますが、アバランチレスキューの具体的な方法を学ぶのは初めてで、これまでアバランチレスキューの具体的な方法を学ぶ機会がありませんでした。そのため、アバランチレスキューの手順を詳しく学ぶことができたことは、大きな収穫でした。特に、雪崩ビーコンやプローブ、ショベルを使った実践的なトレーニングを経験できたことは、自分の安全意識を一段と高めるきっかけとなりました。私はスキー経験が浅く不安でしたが、先輩方や岡村さんの指導で基礎技術を習得し、初めて挑戦したバックカントリーでは、天候にも恵まれ、美しい景色を楽しみながら山を滑るという貴重な体験ができました。とはいえ、自分のスキー技術はまだまだ未熟で、時には周囲に迷惑をかけてしまった場面もありました。特に急な斜面や深雪ではコントロールが難しく、何度も転倒してしまいました。この経験から、自分の技術不足を痛感しました。このセッションでは、技術面だけでなく、仲間との協力や安全への準備の重要性も学びました。次回はさらにスムーズに行動し、成長を実感できるよう努力します。この経験を活かし、再びバックカントリーに挑戦したいです。

渡邊あや(OLTC)

今回のWEAバックカントリースキーでは自分が今まで体験したことのない事の連続でした。 一日目はバックカントリーに向けた雪崩講習。まず驚いたのが雪崩が発生してから15分で救助しなくてはいけないということ。雪に足が埋もれながら素早く移動しなくてはいけないのは体力の消耗が激しく、周りに着いていくので必死でした。そして傷病者の移動はさらに大変でした。今回は移動距離が近かったので良かったですが、本番での長距離移動はどうなるのだろうと思ってしまいます。そしていざバックカントリーへ。圧雪されているスキー場とは違い新雪はスキー板が埋まって上手く滑れません。さらにスキー板を履くことすら難しかったです。今回はホルモンやワカのフォローがあったため完走することが出来ましたが、自分が指導者の立場となりリードするにはまだまだ技術不足だと痛感しました。 今回WEAバックカントリースキーでは人に助けて貰ってばかりでした。あと2年後にはキャンパーを卒業し、カウンセラーになるには自分の実力が不足していることに気づけました。残りの2年間、自分を変えるために自分の力で成し遂げる力をつけていき、成長していきたいです。

佐藤素帆

レスキュー訓練では、私は資格を持っていないため患者役を体験しました。雪の中で負傷し、動けない状態を再現する中で、恐怖感を感じる一方、周りのみんなが声をかけながら救助してくれたことで、大きな安心感が生まれました。  訓練では、15分以内に行方不明者を発見し、患者の負傷状況に応じて持っているもので固定し、医療施設まで搬送するという課題がありましたが、これが非常に難易度の高い作業だと感じました。特に雪の中で活動すること自体が大きなリスクを伴うと学びました。  寝袋に入れられて運ばれる経験もしましたが、雪の中でも暖かく感じられました。元気な私は。バックカントリーでは、絶景を眺めながら登っていく時間が本当に気持ちよく、最高の体験でした。急な上り坂ではヒールを上げたり、下り坂では板のトップを上げたりするなど、初心者の私たちに必要な知識や技術をホルさんやワカさんが丁寧にサポートしてくれたおかげで、楽しい登山ができました。 しかし、その中で学んだのは、「自分のことは自分でやる」ということが山では当たり前だということです。私たち学生にはできないことが多く、全体のスピードが落ちたことで、結果的にプラン変更の可能性が生じることを実感しました。今回は天候に恵まれ、最初のプランを無事に実行できましたが、事前の準備と知識がいかに重要かを強く感じました。  中尾根の新雪を滑る体験はとても楽しかったです。転んで雪に埋もれると起き上がるのが大変でしたが、体重移動を意識してターンしたり、大きく回って止まるように工夫しながら滑りました。また、前日に雪崩時のレスキュー訓練を行っていたため、滑走中も「もし雪崩が起きたら」という緊張感がありましたが、それも含めて貴重な経験でした。  今回の経験を通して、「山に入る前に最低限の知識と技術を身につけること」がいかに大切かを学びました。自分のことを自分でできない人が山に入ることで全体に影響が出ることを考えると、事前指導や準備がいかに重要かを再認識しました。

岡村泰斗

アウトドアリーダー(野外指導者)の定義は、アウトドアパスーツを通じて、参加者の安全と環境に配慮し、参加者の目的の達成を支援する指導者です。安全、環境、目的の達成を支援は、WMTCLNTWEAなどを通じて、業界全体の底上げが進んでいますが、ことアウトドアパスーツの指導については、6+1では負荷的な資格に属し、WEAでは担保されていません。特に雪、水、岩に関しては、メンバーの皆さんの個人の意識と努力に託されています。安全、環境は前提であり、支援のテクニックは、体験があってこそ必要となります。質の低い体験から、質の高い学習を引き出すことはできません。6+1でベイシックアウトドアリビングスキルが必須なのは、キャンプをするためではなく、アウトドアパスーツによるトリップのためです。WEAが真のWilderness Educationになるために、我々のアウトドアパスーツの指導力が不可欠です。今回、若手中心のユースセッションで、そのためのスキルアップの機会を作ってくれたことは明日のWEAJにとって大きな一歩です。体の動く限り、体と脳に染み込んがアウトドアパスーツの技術を伝えていきたいと思います。

Follow me!