WEAJワークショップ「アウトドア活動時における野生動物との遭遇リスクとその対処法」

大嶋元(特定非営利活動法人ピッキオ)

長野県軽井沢町は、浅間山麓に広がる標高1000mの高原上に位置している。避暑地として年間800万人の観光客や別荘者が訪れ、ハイシーズンの8月には多くの避暑客でにぎわう。また豊かな自然に恵まれており、町の北半分は上信越高原国立公園と浅間鳥獣保護区に指定されていることもあり、町内にはツキノワグマ(以下クマ)をはじめとして多くの野生動物が生息している。奥山(国有林)と住宅地の間の森林には、夏期のみ利用される別荘地が点在しており、野生動物と人間とのバファーゾーン(緩衝帯)となっている。1990年代後半、別荘地のゴミ捨て場でゴミに餌付いたクマがエサを求めて頻繁に出没するようになったことをきっかけに、ピッキオは軽井沢町から委託を受けて現在までクマ保護管理活動を続けている。ピッキオのクマ保護管理の特徴として、以下の点があげられる。

  • ゴミにクマが餌付くのを防止するための「クマ対策ゴミ箱」の設置
  • クマの放獣や駆除を適正な基準を設けて管理するための「基本方針」の策定
  • 各個体の性格や行動を把握するための「個体管理」の徹底
  • クマ対策の先進地である北米で活用されている「クマ対策犬(ベアドッグ)」の導入
  • クマの出没理由を解明し、問題個体を特定するための「通報対応・現場検証」の実施
  • 看板の設置や地元小中学校での『クマ安全講習会』などによる「啓発活動」の実施

これまで基本方針を定めた上で、ゴミ箱の改善やベアドッグの導入を進めてきた結果、クマによってゴミを荒らされた件数が129件(1999年)から1件(2017年)に激減し、人的被害件数を7件(2001年~2017年の16年間)と低く抑えることができた。

 

野生動物に出会わないために

アウトドアリクリエーション(キャンプや登山、トレイルランニングなど)として森林などで活動する際には、人間側が野生動物の生活圏内にお邪魔するため、注意事項がいくつかある。野生動物(特にクマなど人に危害を及ぼしかねない動物)との遭遇を防ぐために重要なのは、①相手(動物)のことをよく知ること、②出会わないこと、そして③出会ってしまった場合の対処方法を知ることである。①クマの生態や行動、痕跡を知ることで、動物への遭遇のリスクを減らすことができる、②鈴や音の出るものを携帯し、クマにこちらの存在を知らせることで、ばったり遭遇などを未然に防ぐことができる、③出会ってしまった場合には、焦らず、騒がず、ゆっくりと引き下がり、相手の動きに合わせて対処することで被害にあわないようにする。

 

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