ジャーナルライティングがキャンプカウンセラーのメタスキル向上に及ぼす効果

○伊丹崇・岡村泰斗(backcountry classroom Inc.)

キーワード:野外指導者養成、キャンプカウンセラー、ジャーナルライティング、メタスキル

1.研究目的

野外教育の効果を左右する要因として、キャンプカウンセラーは、参加者に最も近い存在であり、その成長に最も影響を与える存在と言える。Priest1)は、キャンプカウンセラーを含む野外指導者のスキルを、ソフトスキル、ハードスキル、メタスキルの3つに分類しており、リーダーシップ、判断力、コミュニケーションなどを含むメタスキルは、ソフトスキルとハードスキルをより効果的に発揮させるために必要なスキルであると述べている。しかし、我が国の野外教育専門職が有する資格として存在する、全国体験活動指導者認定員会(NEAL)と日本キャンプ協会(CNAJ)の指導者養成プログラムは、欧米の指導者養成プログラムと比較すると、メタスキルの向上を目的としたカリキュラムが不足している2)。加えて、メタスキルは、ハードスキル、ソフトスキルと比べ、個人の特性の影響を受け、かつ獲得するために時間を要すると言われている1)。

長年野外指導者の育成を行うWilderness Education Associationでは、メタスキルのトレーニングとして、日々のメタスキルの発揮、その結果、次回への改善を、フィールドノートに記録し、インストラクター、参加者同士でフィードバックする、「ジャーナルライティング」という方法を導入している。また学習方法の一つとしてこのような「言語化」3)の効果も証明されている。そこで、キャンプ指導者実践におけるキャンプカウンセラーのジャーナルライティングが、メタスキルに及ぼす効果を明らかにすることである。

2.研究計画

対象:特定の民間野外教育団体が主催する2018夏のキャンプに参加するキャンプカウンセラー○○名を対象とする。キャンプカウンセラーの指導方針は、団体によって大きく異なるため、単一の団体を対象とする。

実験条件:対象者をA群とB群に分け、A群に対し、キャンプ指導の前に、ジャーナルライティングの書き方についてレクチャーを行う。キャンプ中は、各種メタスキル理論の講義を受けたキャンプディレクターからジャーナルに関するフィードバックを受ける。B群は、通常のスタッフトレーニングを行い、ジャーナルライティングを行わないが、キャンプディレクターからは一般的なフィードバックを受ける。

調査内容:2018年夏季キャンプ前、キャンプ後にアンケート調査と聞き取り調査を行う。キャンプ前後でのメタスキルの変化を比較するとともに、3Eフォームを用いてどのようなキャンプ指導体験がキャンプカウンセラーのメタスキル向上にどのように影響したかを検証する。

3.期待される効果

ジャーナルライティングがキャンプカウンセラーのメタスキル向上にどのように影響するかを明らかにすることにより、今後の指導者養成プログラムの充実に寄与することができる。

4.今後の課題

1)メタスキルの内容を特定する。
2)メタスキルを測定するアンケートを特定する。
3)キャンプディレクターに対するメタスキルのカリキュラムを開発する。

文 献
1)Priest,S.&Gass,M.(2005):Effective Leadership in Adventure Programming, Human Kinetics,
2)伊丹崇,岡村泰斗(2018):アウトドアリーダーシッププロフェッショナルを考える-国内外の野外教育指導者養成プログラムの比較から-,日本野外教育学会第21回大会,
3)鈴木渉,齊藤玲(2018):自己説明からみたlanguagingの理論と研究、宮城教育大学紀要、52、219-227

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です