12回目のJapan Outdoor Leadership Conferenceが東京の西多摩で開催することになりました。西多摩は首都東京の郊外でありながら、その半分以上を国立公園が占めるという、日本においても世界においても特異な地域であり、さらに人口減少、少子高齢化が進む様々な課題を抱えた地域でもあります。このような地でカンファレンスが開催されることに意味があります。
昨年、コロナ禍が一つの区切りを迎え、国内外の旅行者数は回復傾向、観光地だけではなく、地域の様々なイベントはまさにこの時を待っていたという賑わいを見せていました。コロナ禍で一気に高まったアウトドアブームは、アドベンチャーツーリズムという新しい言葉の普及でビジネスとしても大きな期待が寄せられています。
一方で、各地でオーバーツーリズムの問題が噴出し、環境負荷が高まっています。都外移動が制限されていた2020年夏、西多摩には都内ナンバーの車があふれていたのが印象的でした。そのようななか、2023年、青梅市とあきる野市は、アウトドアを楽しむための環境倫理プログラムを提唱するNPO法人Leave No Trace Japanとの連携協定を結びました。誰もが小学校でSDGsを学ぶこの時代において、今まで以上に環境と調和した野外教育のあり方、観光のあり方を地域全体で考える必要があります。
今回のカンファレンスのテーマは「西多摩から考える日本のアウドドアビジネスの未来」です。野外教育のプロフェッショナリズムをテーマとするWilderness Education Association Japanのカンファレンスとして正面から「ビジネス」としての野外教育やアウトドアの世界に向き合います。
明治以降の西多摩の歴史は、都市化と自然保護、そして観光のせめぎあいの歴史でもあります。この地域は常に大都市郊外として、東京であることの恩恵とそれに伴う痛みを受け取る場所であるとともに、自らも拡大する郊外の最前線として都市と自然の融合にチャレンジしてきた場所でもあります。
郊外は都市と自然の境目であり、融合する場所であるからこそ、私たちが都市と自然とどのように付き合うべきかを常に問いかけます。そして今、静かに縮小しつつある地域のなかで、アウトドアビジネスが地域活性化に果たす役割を考える。これは西多摩だけでなく日本全体を考える上でも重要なテーマです。このテーマを野外指導者、パートナーとなる自治体や企業、そして市民と一緒に考える場としたいと考えています。西多摩で皆様とお会いできることを楽しみにしております。
12th Japan Outdoor Leadership Conference実行委員長
多摩大学 経営情報学部 教授 松本祐一