6月19日(水)19時より S&Dたまぐーセンターにて
アウトドアプログラムからすべてのリスクを排除することはできず、そしてそうすべきではありません。そこにはアクティビティから切り離せないだけでなく、価値ある固有のリスクも含まれているからです。質の高いプログラムを実現するためには、プログラムのミッションを踏まえつつ、予め受け入れているリスク、または合理的に予想されるリスクを管理する、すなわちリスクマネジメントを進めていく必要があります。
不確実性、不明確さを有するアウトドアプログラムのリスクマネジメントは、刻々と変化する状況にフィットするしなやかな対応能力(レジリエンス)を高めていくことが肝要です。そのためには「うまくいかなくなりそうなこと」を減じるだけでなく「うまくいく(予定通り行く)ことにつながること」を増やしていくという発想も求められます。加えて、たとえ事故やヒューマンエラーが生じても、それが重大事故に至らないようにするためのマージン(余白/余裕)をつくり出す習慣がリスクマネジメントを洗練させていきます。
今回のクロストークでは、野外指導者として、教育の立場から岡村泰斗氏(アウトドア エデュケーター)、ガイドの立場から平井琢氏(ラフティング マスターガイド)から、それぞれが考える野外指導現場のリスクマネジメントのキーファクターをご紹介いただきます。また、現場と医療をつなぐレスキューの立場から八櫛徳二郎氏(減災防災クリエーター)、さらに最終ターミナルである医療の立場から稲垣泰斗氏(救命救急医師)にもご登壇いただきます。4氏には「教育とリスクのバランス」「事前準備」「現場での判断」「状況の安定化」「リスク共有」等々をキーワードに、アウトドアでの事故発生の最小化のポイントや事故発生後の被害拡大抑止のポイントについて熱く語っていただきます。
モデレーター:中村正雄(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 教授)
自然体験活動における安全マネジメントについて、研究を進めています。マネジメントすべきはリスクなのか、それとも安全なのか、そのあたりも気になるところですが、今回はモデレーターとしていい感じでクロストークに関わっていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
岡村泰斗(株式会社backcountry classroom CEO)
Wilderness Education Association、Wilderness Medicine Training Center、Leave No Traceなど数々の野外指導者のプレフェッショナル資格の国内導入を果たしたのは、自然の持つ教育力を活用できる野外指導者を育てるため。野外教育の現場で、リスクと教育のバランスをどのように保っているのか話題提供します。
稲垣 泰斗(Tight medical works 代表)
北里大学医学部地域総合医療学 特任助教ウィルダネスメディカルアソシエイツジャパン ファカルティ日本救急医学会専門医
山とスポーツと生き物を愛する救急医。日本での野外救急法の普及、野外医学の発展、アウトドアスポーツイベントにおける救護体制確立のために奔走しています。野外、病院前、救急外来、集中治療室と、各フェーズで診療を行ってきた経験を現場のみなさんに還元します。
八櫛徳二郎(減災防災クリエイター)
1995年より東京消防庁で27年間勤務、ハイパーレスキュー勤務などを経て、2023年に退職。一般市民の減災、防災を目的にさまざまな分野の専門家と協力し、一般社団法人西多摩減災防災ネットワーク、一般社団法人消防救助技術開発を設立し、活動を続けている。
平井琢(アムスハウス&フレンズ代表)1975年生まれ 東京都出身長瀞町でラフティングやパックラフトなどリバーツアーガイド会社「アムスハウス&フレンズ」の代表。 ・ラフティング協会公認マスターガイド・ラフティング協会技術安全部会長・急流救助講習レスキュー3ジャパンインストラクター・長瀞町観光協会副会長