『アウトドアがどのようにして地域に貢献できるか』

第12回ジャパンアウトドアリーダーシップカンファレンス実行委員会

事務局長 柴田大吾

アウトドアレクレーションをどのような場所で楽しむか。浮かぶイメージはおそらく千差万別で一まとめにすることはできませんが、国立公園で 25.8%、国定公園で 41.3%を民有地が占める日本です。完全に人里離れた場所でアウトドアスポーツを楽しむためには、移動も含めてかなりの日数を要す為、長期間の遠征などを除き、国内で行われるアウトドアの大半は人の生活圏と近い距離で行われていると言えるでしょう。

 ジンバブエを流れるラフティングの聖地・ザンベジ川を漕いだ時に、ラフティング中に発せられる歓声や叫び声がうるさいと言われることはありませんでした。これはパタゴニア地方のフタルフ川に行った時も同様です。ただ、多摩川御岳渓谷では住宅地のすぐそばを川が流れているため、ボートから放たれる声は地域住民にとっては騒音でしかないことを御岳にきて学びました。

 『持続可能な』というワードは、近年様々な場所で目にします。持続不可能な物の中にも美学や正義はありそうですが、その議論はさておき、『持続可能なアウトドア』を考えるときに、前述の日本のアウトドアを取り巻く環境を前提とすると、地域コミュニティーからの理解は、継続してアウトドアを楽しむためには不可欠だと考えます。人の生活圏のすぐそばにある山や岩、川などのフィールドを使わせていただき、アウトドアレクレーションを楽しむ我々は、地域に対してどう貢献できるかと考え、そのエリアに居住される方にどうしたら応援してもらうことができるかという視点を持つことは、地域に根付いたアウトドアレクリエーションを継続して楽しむ上で極めて大切なことではないでしょうか。”誰のものでもない”からと、この視点を放棄して振る舞うようでは持続可能性はないですし、そのようなアウトドアであれば、持続させる必要もないと考えます。

 では、どのような形で地域からの理解を得ることができるのでしょうか?Give and Takeとはよく言ったもので、まずは価値を提供(Give)することで、アウトドアを楽しみやすくなる状況を得られる(Take)のだと思います。順番が反対になることはありません。我々はどのようにして地域に対して貢献することができるのでしょうか?リバークリーン(河川清掃)や水難救助への積極的な関わりは、ラフティングが社会に対して提供できる価値だと思い、自分達は多摩川で活動をしています。ただ、貢献という言葉もまた難しいところがあり、受け手によっては全く意味がなかったり、逆効果である場合もあります。西多摩で広がっている文化として、【ダイアローグ(対話)】というものがあります。価値観が異なる人が集まり形作られる社会だからこそ、お互いの価値観を尊重し、どうすればお互いの成長や楽しみに繋げていくことができるか。対話を通して考える手法であると理解しています。ビジネスとして経済的な貢献をすること、地域の方がアウトドアを楽しむ機会を創出することも大切なことですが、前提として地域との対話が重要なポイントになるとも考えています。

 今回のカンファレンスには、地域社会の代表である西多摩4市町村の首長にご登壇いただくシンポジウムや、WEAやLNTはもとよりアウトドアにもつながりが少なかった地域コミュニティーの方々にも参加いただく取り組みを実施します。アウトドアと地域が密接につながる西多摩の、行政と民間が連携した取り組みを、全国からお越しの皆さんに、うまく進んでいることも進んでいないことも併せて、一つのモデルケースとしてご紹介できればと考えております。また、野外教育プログラムWEAや環境倫理プログラムLNTといった世界のトップの知見を西多摩地域の発展に活かしていくことも非常に重要なカンファレンスの意義だと感じています。

 カンファレンスには有難いことに、全国たくさんの地域、アメリカや中国からも様々な価値観や経験を持つ方が参加されます。皆様には(スタッフも含めて)プログラムを通じて学びを深め、期間中の会場が多くの出会いが生まれる場になり、それぞれの活動を加速させる機会となることを期待しています。WEAやLNTの根底にあることは、フィールドに出てアウトドアを楽しむことが人の生活をより豊かにすることだとのメッセージだと自分は理解しています。東京にあって自然豊かな西多摩には、そのアクセスの良さや首都圏の圧倒的な人口の多さから、アウトドアで社会をより良いものできる可能性が強くあります。また、自然を楽しむ場を持続的に提供することは社会に対しての西多摩地域の責任だとも感じています。そのような場に皆様をお迎えすることができること、実行委員会メンバー一同光栄に感じております。限られた時間ではありますが、フィールドワークショップなどで西多摩を自然を感じていただくことも楽しみにしております。

西多摩の自然にようこそ!!